個人年金保険は本当にお得なのか?
将来の備えとして個人年金保険を検討する人は少なくありません。特に「節税になる」「利回りが高い」といった説明を受けると、魅力的に感じられることもあるでしょう。しかし、実際の利回りやリスクを正しく理解しないまま契約してしまうと、期待していたほどのメリットが得られない場合もあります。
個人年金保険の特徴
個人年金保険には主に以下の2つの特徴があります。
- 私的年金であること:公的年金に上乗せするための任意加入の制度です。
- 節税効果があること:年末調整や確定申告で保険料控除が受けられ、税負担が軽くなる可能性があります。
ただし、この節税効果だけを基準に判断すると、誤った利回り計算をしてしまうケースが少なくありません。
節税効果の誤解が生まれる理由
よくある誤解として、「毎年の節税額 ÷ 年間保険料」で利回りを求めてしまうケースがあります。例えば、年間12万円の支払いで6,800円の節税効果がある場合、
6,800円 ÷ 12万円 = 約5.7%
この数字だけを見ると、非常に高い利回りのように見えます。しかし、この計算には大きな落とし穴があります。
正しい利回り計算には「複利」の考え方が必要
節税効果があるのは「保険料を支払った年だけ」です。翌年以降、その年に支払った保険料は節税効果を生みません。つまり、年を追うごとに「積み上がった元本」に対する節税効果の割合は小さくなります。
このため、単純な割り算では正しい利回りは出せません。
利回りを正しく比較するための指標「IRR」
投資商品を比較する際に使われる指標として、IRR(内部収益率)があります。IRRを使うと、
- 投資期間(支払期間・受取期間)
- お金の出入り(キャッシュフロー)
をすべて含めた実質的な利回りを計算できます。
IRRで計算すると見えてくる現実
一般的な個人年金保険のモデルケースでは、節税効果を含めても IRR は以下のような数値になることが多いです。
- 約0.4%〜0.7%(平均的な収入の場合)
- 高所得者でも1%未満
これは、銀行預金とほぼ変わらない水準であり、インフレを考えると実質的には目減りする可能性もあります。
個人年金保険に潜むリスク
さらに、以下のようなリスクも考慮する必要があります。
- 流動性リスク:早期解約すると元本割れする可能性が高い
- 金利リスク:契約後に金利が上昇すると相対的に不利になる
- インフレリスク:受取額の価値が将来下がる可能性
まとめ:節税効果に惑わされず、本質を見極めよう
個人年金保険は一見メリットが多いように見えますが、実際には利回りが非常に低く、資産形成としては効率的ではない場合がほとんどです。
本当にお得かどうかを判断するには、
- IRRを使って実質利回りを計算する
- 支払期間と受取期間を正しく把握する
- リスクも含め総合的に判断する
といったポイントが重要です。
節税効果は確かに魅力ですが、それだけで判断すると損をする可能性があります。自分の資産を守るためにも、正しい知識を身につけて判断することが大切です。
