金の価格が過去最高値を更新、購入者が殺到
近年、金(ゴールド)の価格が過去最高値を更新し、購入者が殺到しています。国内では金の製造が追いつかず、一部の小型地金(じがね)の販売が一時停止されるほどの人気ぶりです。
2020年頃、1グラムあたり約7,100円だった金は、2025年10月時点で約21,800円前後と、わずか5年でおよそ3倍に値上がりしました。主要な株式ファンドに匹敵するリターンを示しており、改めて注目を集めています。
金が値上がりしている5つの要因
では、なぜこれほど金の価格が上昇しているのでしょうか。主な要因は以下の5つです。
① インフレの影響
インフレとは、物価が上昇し、通貨の価値が下がる現象です。インフレ時には、おにぎりが100円から150円になるように、金の価格も上昇します。現在の世界的なインフレ傾向が、金価格の押し上げ要因となっています。
② 財政不安
多くの国で財政赤字が拡大し、通貨の信頼性が低下しています。「無限に刷れる通貨」よりも「希少性のある資産」として金を選ぶ人が増えているのです。
③ 中央銀行による金の買い増し
特に中国などの中央銀行が積極的に金を買い集めています。需要が高まれば価格が上昇するのは自然な流れです。
④ 地政学リスクの高まり
戦争や紛争、災害などのリスクが高まると、人々は「安全資産」である金を求めます。ロシア・ウクライナ紛争や中東情勢の不安定化も、金の価格上昇に影響しています。
⑤ 為替の影響(円安)
金はドル建てで取引されるため、円安になると国内価格も上昇します。最近の円安傾向も、金価格を押し上げる一因となっています。
なぜコインより地金が売れているのか
金を現物で買う場合、「地金(バー)」と「金貨(コイン)」の2種類があります。現在人気が高いのは地金、特に小型のものです。その理由は次の通りです。
- コスパが良い:金貨はデザインや加工にコストがかかり、その分割高になります。一方、地金は純粋に金の価値に近い価格で購入できます。
- 買いやすい価格帯:5グラムで約10万円、10グラムで約20万円程度。1キログラムになると約2,000万円にもなるため、小型地金の方が手が届きやすいのです。
- 税金対策がしやすい:金を売却して利益が出ると「譲渡所得」として課税されますが、50万円の特別控除があります。小分けに売却することで税負担を抑えられるため、小型を選ぶ人が多いのです。
- 利便性が高い:保管や持ち運び、相続などの面でも、小型地金の方が扱いやすいという利点があります。
金は「値上がりしているから買う」は危険
金の価格が上昇している今、「今のうちに買った方がいいのでは」と考える人も多いでしょう。しかし、「値上がりしているから」という理由だけで購入するのは危険です。
金は「安全資産」と呼ばれますが、実際には大きく価格変動します。1970年代以降のデータを見ると、短期間で+100%以上値上がりする時期もあれば、−30%近く下落する時期もあります。株式並みに値動きが激しい資産だということを忘れてはいけません。
投資スタイルとしての位置づけ
金は「増やす資産」ではなく「守る資産」として位置づけるべきです。世界経済や為替リスクに対する“保険”として、資産全体の5〜10%程度を保有するのが現実的なバランスでしょう。
一方で、長期的な資産形成を目指すなら、企業の成長に連動する株式やインデックスファンドへの投資がより合理的といえます。金は置いておくだけの資産であり、生産性や配当を生み出すものではありません。
まとめ:金投資は「目的」を明確に
今回の金高騰は、インフレや地政学リスク、円安など複数の要因が重なった結果です。確かに注目すべき資産ではありますが、「儲かりそうだから」という理由で飛びつくのは危険です。
金はあくまでリスク分散や資産防衛の一手段。目的を明確にし、自分の資産全体のバランスを考えて取り入れることが大切です。
