プライベート資産投資が個人向けに拡大する背景とは?
近年、金融業界では「プライベート資産」と呼ばれる投資商品を、個人向けにも広げていこうという動きが強まっています。テレビ番組やインタビューなどでも、金融機関のトップが「個人投資家のポートフォリオには、まだプライベート資産の比率が低い」と発言する場面が増えました。
しかし、この動きを個人投資家はどう受け止めるべきでしょうか。結論から言うと、プライベート資産を積極的に購入する必要はありません。むしろ注意すべき対象です。
プライベート資産とは何か?
プライベート資産とは、公開市場で取引されない資産の総称です。具体的には以下のようなものが含まれます。
- 未公開株(非上場企業の株式)
- 非上場企業の債券
- 不動産やインフラへの直接投資
- その他、取引所を経由しない非公開市場の商品
私たちが普段購入しているインデックスファンド(例:世界株式への投資信託)は、透明性の高い「公開市場」で取引される資産です。一方、プライベート資産は情報開示が限定的で、まさにブラックボックスの世界とも言えます。
なぜ今プライベート資産が注目されているのか
プライベート資産市場は近年大きく拡大しており、今後も成長すると予測されています。このため、金融機関が個人投資家向けの商品として積極的に取り扱いを増やしたいという思惑があります。
広告では次のようなキャッチコピーが使われることもあります。
- 富裕層だけが利用してきた投資を、あなたにも
- 有名大学が採用する投資戦略
- S&P500や世界株の次の一手に
しかし、これらの言葉に安易に反応するのは危険です。問い合わせをしただけで営業対象になることも多く、慎重な姿勢が必要です。
プライベート資産をおすすめしない理由
プライベート資産を推奨しない理由は非常にシンプルで、「高コスト」「高リスク」「不透明」の3つに集約されます。
1. 圧倒的に高いコスト
プライベート資産の多くは、購入時の手数料・管理コストが非常に高く設定されています。成果報酬型の手数料も一般的で、投資家よりも運用側が儲かる仕組みが多く存在します。
2. リスクの大きさが見えない
公開市場とは違い、価格や業績の情報がリアルタイムで確認できません。リスク評価が難しく、個人投資家が適切に判断できる環境が整っていないのです。
3. リターンがコストに見合わないことが多い
一時的に大きなリターンが出るケースはありますが、長期的にはコストに食われ、実質的な利益が出にくい傾向があります。ある書籍でも、プライベート商品への投資は「手を出さない方がよい」とまで書かれています。
金融業界がプライベート資産を売りたい理由
金融機関が力を入れる背景は単純で、新しい収益源にしたいからです。透明性の高いインデックスファンドが人気になり、販売側が利益を取りにくくなったため、より高利益の商材(=プライベート資産)を販売したいという狙いがあります。
しかしその結果、個人投資家が過剰なコストや不透明なリスクを負うことになります。
投資家のヨットはどこにある?という金融ジョーク
金融業界を象徴する有名なジョークがあります。
ある観光客が金融街で豪華なヨットを見て「このヨットは誰のもの?」と質問すると、ガイドは「金融機関の人たちのものです」と答えました。観光客が「では投資家のヨットは?」と聞くと、ガイドは黙り込んでしまった……という話です。
意味は単純で、最も儲かるのは投資家ではなく販売業者であるという皮肉です。プライベート資産はまさにこの構図に当てはまります。
プライベート資産は本当に必要か?
結論として、一般の個人投資家にとってプライベート資産は必須の投資対象ではありません。むしろ、不要なリスクとコストを抱える可能性の方が高いと言えます。
長期的に資産を増やしたいのであれば、透明性が高く、実績も十分なインデックスファンドなどの公開市場の商品を活用した方が合理的です。
まとめ:余計な誘惑に惑わされず、守る力を持とう
プライベート資産は一見魅力的に見えますが、実際には不透明でリスクが高く、コストも大きい商品です。個人投資家が安易に手を出す必要はありません。
着実に資産形成を進める人は、余計な誘惑に流されず、長期でリスクを管理できる商品に集中しています。これこそが、確実に資産を増やすための「守る力」です。
